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社長からの一言
7. シーケンサ(PLC)のこと
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シーケンサという名詞は三菱電機に知的所有権があるので、一般にはシーケンサという言葉を不用意に使ってはいけないと聞いたことがあります。
一般名詞としてはPLC(Programmable Logic Controller)が正しいそうです。
ちなみに三菱電機社内ではPLCという呼び方はご法度で、「PC」と呼ばなくてはならないそうです。
一般にPCといえばPersonal Computer、すなわちパソコンの別名ですが、我々は世の中にパソコンが出現する前からPLCをPCと呼んでいたんだ、という三菱電機のプライドがあるのでしょう。
最近ではネットワーク技術の世界にPLC(電力線通信)という言葉が出てきたので、ややこしくなっています。

日本は、他の国々に比べPLCが非常に普及している国のようです。規模の大小を気にしなければ、日本には10社を超える著名なPLCベンダーが存在します。
アメリカやヨーロッパにも著名なPLCベンダーはいくつかありますが、欧米のPLCは日本のPLCと違います。 最近のPLCは、国際標準(IEC61131)で規定されています。
この規定によればPLC言語にはいくつか種類があり、日本のPLCユーザーのほとんど(感じでいうと95%以上)はリレーシーケンス図の延長線のラダー言語を使っていますが、それに対し欧米の場合にはフローチャート図やSFCといった構造化言語が使われています。
したがって、一口にPLCといっても、日本と日本以外では随分その使われ方・文化が違うようです。
ちなみに韓国でも、鉄鋼や自動車産業など比較的歴史のある産業では、かつての日本の影響か、ラダー言語が使われているケースが多く見られます。半導体や液晶産業では比較的少ないようです。

ラダー言語には、技術的というよりも産業構造的にいくつか特徴があります。 PLCのCPUには汎用か専用かは別にしてマイクロプロセッサーが使われており、その意味ではコンピュータなのですが、ラダー言語を使うPLCと、C言語などのコンピュータ言語を使うパソコンやマイコンなどのコンピュータでは、文化がはっきり異なります。
使われる記述言語の違いから来ているのかもしれませんが、一般にラダー言語も C言語もアセンブリ言語もできる、というエンジニアは極めて少ないですよね。
少し言い過ぎかもしれませんが、ラダー言語を使うエンジニアは制御用にPCやマイコンボードを使うことが好きではないのです。曰く「マンマシンシステム以外はPLCで何でもできる」。
実際、PLCベンダーの中には確かに何でもできそうなハード、ソフトの品揃えをしているところがあります。
また会社の組織上も、所属している部署が違う場合が多いです。ラダー言語のPLCを使うグループは電機や機械と言った設備部門に所属していますが、パソコンなどでC言語でシステムを実現するグループはどちらかというとコンピュータ部門に所属していることが多いです。
そしてお互いにシステムの機能分担の境界線を引き、EthernetやRS232C通信でインタフェースしています。この境界を取り払い、1つのシステムとして機能を実現したほうが高性能で経済的なものを構築できる場合でも、この壁は大きいようです。

街の書店では、パソコンを始めいわゆるコンピュータ関連書籍は山ほどありますが、PLCに関する書籍や雑誌はほとんどありません。
大学や専門学校でも、コンピュータ技術を教えるカリキュラムや研究室は多いですが、PLCのそれは聞いたことがありません。
また産業用システムを構築するに当たっても、アプリケーションソフトウェアの受託開発や要員派遣といった業態は多々ありますが、PLCの世界(ラダープログラミング)でのそういうビジネスは存在しないといっていいでしょう。
これは、コンピュータによるシステム構築ビジネスの世界ではハード/ソフト等々で分業体制がとれますが、PLCの技術・応用技術はもはや完成されたものであり、またその技術の伝承が職人のような徒弟制度でなされている、ということによるのかもしれません。

欧米、特にヨーロッパでは、PLCを使ったアプリケーションソフトウェアは、フローチャート言語(FC)やSFC言語で書くことがほとんどです。
FCやSFC言語はPLC言語における構造化言語であり、ソフトウェア技術的にもよく考えられているものです。
コンピュータ言語であるC言語などとも考え方が似ていて、パソコン等のコンピュータエンジニアにもあまり抵抗なく使えるようです。
現に私が知る限り、ドイツのエンジニアの多くはC言語もPLCも上手に使い分けています。
日本ではパソコンを使ったソフトウェアPLCはなかなか育っていませんが、ヨーロッパではソフトウェアPLCはごく普通に使われており、ドイツではPHOENIX CONTACT Software GmbHやCodeSys(会社名:3S-Smart Software Solutions)といったソフトウェアPLCベンダーが活躍しています。
日本のハードウェアPLCの中でも、彼らのソフトウェアを移植したものが多く使われています。発祥がフランスのISaGRAFは、結局日本ではうまくいいきませんでした。
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パソコンの世界は、いわば業界全体が一種の協業体制になっており、ユーザーもそのメリットを享受しているといえるでしょう。顕著な例がEthernet用カードです。昔は10万円を超える価格でしたが、いまや街のショップで600円です。
三菱電機やオムロン、横河電機など日本のPLCベンダーは、未だにそれぞれの独自アーキテクチャでCPUユニットから周辺機器、ソフトウェア、開発ツール、サービスを提供しています。余計なお世話かもしれませんが、このスタイルでどこまでいくのでしょう。
かつての情報処理の巨人・IBMもメインフレームの世界でそうでしたが、世の中の多様なニーズや技術革新に対応できなくなり、そのほとんどをパソコン文化に譲り渡しました。
(2006/12/26)
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